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​壷中日月長とは

中国の『後漢書ごかんじょ』費長房ひちょうぼう伝に、こんな話があります。当時、汝南じょなんの町に壺公ここうと呼ばれる一人の薬売りの老人が住んでいました。壺公はいつでも夕方、店を閉めると店頭にぶら下がっている小さな古びた一箇の壺の中に、ヒラリと飛び込んで身を隠してしまいます。このことは町の誰一人として知るものはいなかったのですが、ついに費長房という役人に見つかってしまいました。費長房は面白半分に、ぜひ一緒に連れて行くようにと頼みます。壺公はしぶしぶ承諾し、ある日の夕方、費長房を連れて、壺の中へヒラリと飛び込みます。入ってビックリ、壺の中はこの現実の世界と同じように広大無辺で、一箇の別天地を造っていたのです。
 金殿きんでん玉楼ぎょくろうが聳そびえ、広い庭園には珍しい樹や花がいっぱいに花を咲かせ、泉水せんすいなどもいたるところに設けられ、誠に目を見張るばかりのすばらしい世界でした。
 壺公はその国の主人で、仙人だったのです。費長房は、侍女たちから美酒びしゅ佳肴かこうのもてなしを受けたり、いろいろな仙術などの指導を受けたりして、現実の世界に帰ってくると、本人は二、三日滞在したばかりと思っていたのに、十数年も経っていたというのです。日本の浦島太郎のような仙話から、この語は発生しているのです。

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